TextAD
無料
-
出会い
-
花
-
キャッシング
ずっとずっと泣き叫んでいた。
そうしていても誰にも聞こえやしねぇんだって、
わかってたから。
だったら思う存分泣き叫んでやろうと、
涙なんかいっその事枯らしちまおうと、
思ってたんだ―
○。snow songs。○
「おーい、聞いてますか〜?」
「・・・・・・。なんだよ、ハル。」
「もー全然聞いてないんだからー!!日曜!練習スタジオでやんねぇ?」
こいつは幼馴染で一緒にバンドを組んでいる、ハルこと河合晴樹。
ベースをやっていて、やたらと明るい性格だ。
「スタジオ?先週行ったし今週はいいんじゃねぇ?新曲の練習を地道に。」
「うーん、そっかぁ。俺さ、今度の曲かなり気に入ってっから!!MDもらった日にマジ感動して20回くらい聴いたし!!」
まぁ、誰よりも曲と向かい合う姿勢というか、バンドに対する思いは熱い。
それはみんな認めている。
「あー、詞が楽しみだ〜!!俺、ユキの書く詞超大好き!!」
「それはどうも。腹へった・・・・」
「も〜!!なんでユキはそう冷たいかなー!!」
「うっせぇ!ユキじゃなくてユウキだっつの!」
「え〜、いいじゃんめんどい!!それにユキは雪みたいにキレイだしさぁ〜。」
俺は、一部のヤツらから「ユキ」と呼ばれ女みたいな扱いをされる。
名前が「優貴」で、色白だかららしい。
ふざけんな!という話である。
「あーウザイウザイ。メシ買ってこよーっと。」
「あっ、待てよユキ!俺も行く〜!!」
教室を出て行く俺の後ろに、ハルがついてくる。
購買は、すでに行列ができていた。
「なんだよ、今の親は大事な大事な子供に昼メシの一つや二つ作ってやれねぇのかよ。」
俺がそう言うと、
「まぁっ!!なんなんでしょうこの子は!私達だって忙しいのよ!!」
とハルが声色を変えて言ってきた。
俺の家の事情を知っているのに、それにあえて気を遣ったりすることなく接してきてくれるハルは、逆に優しいヤツだと思う。
傷口をいたわるように、触れないように接されるのなんて、
まっぴらごめんだ。
くだらない話で盛り上がっていると、
「ゆ、優貴くん・・・・・」
と、後ろから俺を呼ぶ声がした。
NEXT→
[PR]
動画