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振り返った俺の目には見知らぬ少女。
「え?あの・・・・」
「キャーッ!!本当にユウキだぁ〜!!!!カッコイイ〜ッ!!!!」
いきなりの黄色い声に俺もハルも一瞬怯む。
「本当にこの学校にいたんだぁ・・・・いやーっ、どうしよう!!!嬉し・・・・・」
「お、オイ?!」
なんと少女は泣き出した。
わけがわからない。
「あ、あの・・・・大丈夫っすか?てかどなたですか?」
「おいユキー!!女の子泣かすなよ〜!!」
俺が焦っているとハルが茶化す。
「知るか!俺、身に覚えが・・・・」
「あのっ、いつもライブ行ってます!!!」
少女はいきなりそう言った。
「え?!!」
思わずハモる、俺とハル。
「あたし、BUSTERの大ファンなんですっ!!」
「俺らの?!」
BUSTERとは、俺らのバンドのことである。
「マジー?すっげえ嬉し・・・・・」
ハルが何か言いかけたのを遮って少女が言った。
「ユウキくん大好きなんですーっ!!!握手してください!!!」
「は、はぁ・・・・・」
とりあえず手を差し出すととんでもない力で握り返された。
「きゃー!!!!超嬉しいーーーーー!!!!」
その黄色い声に周りが振り返る。
「えっ、何?」
「あーあれでしょ、今この辺で結構人気のバンドの・・・・・」
「ユウキくん?!」
「そう、その子じゃない?!!」
「ね、ねぇユキ・・・なんか騒がれてるよ?」
ハルが苦笑いをする。
「おい、ここに有名人いるってマジ?!!」
「よくわかんねーけどサイン貰おうぜ!!」
なんだかギャラリーが増えてきている。
あぁ、めんどくせぇ。
なんでインディーズなのにこんな騒がれてるんだよ。
唄が唄いたいだけなのに。
「ハル、早くメシ買えよ。帰ろうぜ。」
「あ、う、うん!!」
「なぁ、お前らって何やってんの?!」
「サインちょうだ〜い!!!」
「・・・・・うるせぇ!!!!」
俺は気づくとそう叫んでいた。
静まり返る、ギャラリー。
「ユ、ユキ?!!」
「騒ぐのは俺らの曲聴いてからにしてくんねぇ?」
やっと黙ったギャラリーの間を、俺はスタスタと歩いていった。
「あっ、待ってユキ!!」
慌ててハルがついてくる。
いつかはこうなると思っていたけど。
人前で唄を唄うっていうのは、こういうことだ。
曲と真剣に向き合ってくれる人もいれば、そうでない人もいる。
すべての人と何かを共有するなんてこと、
できないってとっくに分かっていたのに。
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